Komakuro

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インターネットの出現で犯罪は増加したか

まず、この種の議論で、警察白書などのデータを参照することにあまり意味はないということを指摘しておきます。
なぜなら、まず第一に、犯罪の数は、世の中にネットが存在するかどうかだけで決まるわけではないからです。
例えばネットが出現した時期にちょうど犯罪が増えたというデータがあったとしても、それは必ずしもネットが原因で増えたということにはなりません。
第二に、犯罪の検挙数や認知件数というのは実際に起こった犯罪の数そのものではないし、必ずしも比例するものでもないということも理由です。
実際に起こった犯罪のうち、警察(その他の機関でもおなじこと)が認知や検挙するものというのは一部であり、その割合が少し変わっただけでも認知・検挙件数というのは大きく変わります。
極端な話、急激に治安が悪化して、犯罪が10倍になったとして、検挙数も10倍になるでしょうか?
警察の処理能力にも限界がありますから、おそらくそれは無理でしょう。
したがって、こういった「統計的なアプローチ」をしようとすると、相当な工夫が必要になります。
ここではそこまで難しいことは考えずに、簡単な予想をしてみましょう。
結論から言ってしまうと、筆者はネットの出現で犯罪はかなり増えたのではないかと考えています。
まず、ネットの出現で大きく変わったことは、人と人とが関わる場が劇的に増えたということでしょう。
世間では「ネットの出現で閉じこもりがちになって人間関係が希薄になった」などといったことがよく言われます。
しかし、ネットの出現によって実際に起こっているのは、たとえば一人で過ごす趣味の時間といったところにまで他人とつながるという要素が入ってくるといった正反対の現象ではないでしょうか。
そもそも、簡単に他人とかかわるツールの誕生によって、他人との関係が希薄になるというのは、単純に考えて起こりにくいように思われます。
では、それでなぜ犯罪が増えるのでしょうか。
そもそも犯罪というのは通常、(必要条件として)他人に対して何か害をなす行為であるからです。
つまり、人と人とが関わる場というのは、そのまま犯罪というものが起こる母体となる状況であるわけです。
つまり、人間関係があるところに、完全に一定ではないにしてもいくらかの割合で犯罪がおきるとすれば、人間関係が増えれば単純に犯罪も増えるだろう、という理屈です。
標語的に言えば、犯罪を生むのは人間関係であるわけです。
ところで、ネットの出現で犯罪が増えたのだとすると、ネットは悪なのでしょうか
筆者は、そうではないと考えます。
たとえば、戒厳令のようなものを敷いて、仕事にいくなどのやむを得ない事情がない限り外出禁止(つまり"リアル"でも人間関係を最小限にする)、などといった措置をとれば、おそらくほとんどの犯罪が劇的に減るでしょう。
であれば、このような措置は行われるべきでしょうか。
答えはノーでしょう。
つまり、人と人とが関わる場があれば、そのうち一定の割合でトラブル(犯罪)が起きることは、ある種やむを得ないことであって、犯罪が起きるから人と関わる事自体がだめだ、という理屈にはならないでしょう。
であればネットも同じことです。
ネットの出現で人間関係が増えて、それによって犯罪も増えたとしても、その増えた分の犯罪は、今まであった(つまり"リアル"の人間関係によって生じている)犯罪となんら違いはないわけです。